インド 岩と水・衛生の関係

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2 October 2018
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インドは、中国とアメリカの地下水使用量の合計を上回るほどの地下水を使用しており、地下水の量は急速に減少しています。ウォーターエイドの南アジア技術アドバイザーであるアーエン・ナーフスは、コミュニティの住民が地下水を効果的に管理できるようにするため、水理地質学を研究しています。

私は最近、ウォーターエイド・インドの職員35人と一緒に、インドの地下水に関する講座に水理地質学者として参加しました。インドの地下水の状況は、多くの人々-特に貧困層が直面する隠れた危機と言えます。

各国における地下水取水量の変化参考資料:International Livestock Research Institute
各国における地下水取水量の変化
  • インドは、中国とアメリカの地下水使用量の合計を上回る、世界で最も地下水を使用している国です。
  • 地下水使用量の総量を10億人の人口で割ると、1人1日当たり616リットルになります。
  • 1970年代以降、緑の革命により、地下水の使用量は急増しています。
  • インドには3,000万以上の井戸があり、農家4戸に対して1つの井戸がある計算になります。
  • 300万以上の湧水によってインドの河川の一定の流量が確保されていますが、その水源についてわかっていることはほとんどありません。
  • 貧困層が伝統的に飲料水として使用している湧水や浅井戸、浅い管井戸などは、地下水位の低下が原因で水が枯渇しています。

 

地下水枯渇への道

現在、インド全土において、地下水が枯渇するという警鐘が鳴らされています。最近、この原因は気候変動であると説明されがちです。しかし、地下水の枯渇と気候変動との関係はたしかにある一方、主な原因は知識不足による不適切な管理と規制なしに過剰に行われている地下水のくみ上げです。

インドでは、農業とそのための灌漑が国の発展の鍵であり、政府は1970年代以降、灌漑ポンプ用の電力に対する補助金を交付してきました。これにより、農作物の生産に非常に良い結果がもたらされた一方、大量の水が使用されました。

この状況を改善するために、または、最低でもこれ以上、状況が悪化するのを避けるために、地下水がどこから流れ、またどれくらいあるのか、そしてその地下水をどのように最大限活用できるのかを理解する必要があります。そこに水理地質学が役立つのです。

 

ここからは少し科学の話

地下水についてもっと知るためには、地面、特に岩、より正確に言うならば、「岩の間にある空間」に注目する必要があります。ウォーターエイドが訪れたコミュニティ、マハーラーシュトラ州プネー県ランダラバードは、美しい層状の玄武岩に覆われています。この岩にはたくさんの小さな穴があり、この天然の「岩の間の空間」は水を貯留する上で非常に有効です。しかし、その穴は互いにつながっているわけではなく、また穴の中には何もない状態です。(実はその穴は、約6600万年前に溶岩が冷却されて岩石になった時からの古い空気泡です。)


しかし、その地面は6600万年の間に、動いたり、ずれたりしたため、「岩の間の空間」がさらに作られた可能性は非常に高いといえます。この「岩の間の空間」は、岩石が裂けたり砕けたりすることによってできたものです。このような亀裂はたくさんあり、亀裂同士がつながっているので、かなり大量の水を貯留しながら運ぶことができます。(この水を貯留する層を帯水層と呼びます。)水が地面を流れる速度(正確に言うと「遅さ」)を透過率と呼び、それは1年で数ミリメートルの速度から1日で数センチメートルの速度まで様々です。

水理地質学者は、どの層に最も多くの亀裂があるのか、どの方向に亀裂があるのか、この層が地表に出ている場所、つまり水を涵養する場所を検討します。そして、降雨データや井戸の記録、水の透過率、そして様々な複雑なことや概念を用いて、その水がどの水源からきているのか、井戸を掘削する深さをどのくらいにすべきかを知ることができます。最終段階では、どのくらいの水が入手可能であるかを計算し、それをもとに地下水の使用量と需要量を調整します。

ランダラバードでは、このようなことを理解したことによって、住民が作付する農作物の種類を変えたり、飲み水のために特定の井戸を使用したり、さらには水へのアクセスを増やすために、帯水層を涵養するための小さなダムを建設したりしました。

ランダラバード:概念モデル 情報源:水資源開発管理センター
ランダラバード:概念モデル 
[図中]
Aquifer 帯水層 (広さ:) (層の厚さ)
Aquifer storage: 帯水層における水の貯留量
この図は横方向に数値を計測したものではありません。

 

ランダラバードの住民たちは、「ウォーターセキュリティ(飲料水、農業から生態系までその地域で必要な量と質の水が確保できる状態)」を実現しており、とてもユニークな取り組みです。住民たちは、自分たちが何を持っていて、どれくらいの量の水を今後得られるのかを知っており、それらをもとに地下水の利用計画を立てています。また、とても大切なのは、住民たちは深井戸は飲料水だけに利用することを徹底していることです。

 

ウォーターエイドの役割

ウォーターエイドの「ウォーターセキュリティフレームワーク」で示しているとおり、ウォーターエイドは長期的に続く水・衛生サービスを実現するため、安全で持続可能な水の提供に全力で取り組んでいます。ランダラバードでの経験から刺激を受けたウォーターエイドの35人の職員は、各地の現状をより深く理解するために、コミュニティや政府と協働していく予定です。

ウォーターエイドは、地下水源の規模や使用できる地下水量の限度に関するコミュニティの認識を促すために、コミュニティレベルの水理地質学者を育成するトレーニングを行うというアイデアを検討。また、このようなデータを誰でも利用可能にすること(例:mwaterという地下水のデータを記録するアプリの使用など)も進めています。

私が出席したコースでも、水紛争に関する特別な講座がありました。水理地質学という技術面に対して、このような社会的な観点は重要です。なぜなら、「ウォーターセキュリティ」は、地下水の使用量と需要を調整することによってのみ、実現できるからです。人々がコミュニティ内(県や町、どこでも)で、水の需要バランスを調整できるようにするためには、機転と忍耐、粘り強さが必要で、重要なのは持続可能な発展には根気が必要であるということです。


ウォーターエイド・南アジア技術アドバイザー アーヘン・ナーフス
Twitterアカウント@Arjen_Naafs